▶ アドラー心理学

アドラー心理学とは

 アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラーによって作られた心理学で、正式には個人心理学というようです。アドラー心理学のキーワードとして、個人の主体性、目的論、共同体感覚、ライフスタイルといったものがあり、対人関係に重点を置いた心理学です。特に子どもとの関係、教育や子育てといった方面で有効とされているようです。

 

目的論と原因論

 目的論とは原因論と対をなす考え方になります。原因論では、「AによってBが引き起こされた」と考えますが、目的論では「Bを引き起こすためにAをした」と考えます。アドラー心理学ではこの目的論を基本にしているため、相手の言動の裏にある目的を探り、人間関係に活かそうとしています。例えば、泣きじゃくりながら我ままを言う子どもイメージすると分かりやすいのですが、原因論では欲しいものを買ってもらえず、悲しくて泣いていると考えますが、目的論では欲しいものを買ってもらうために泣いていると考えます。このような場面では子どもの狙いというのが明らかなので分かりやすいですが、子どもの問題行動の中には理解できないものが多々あるようです。そのようなときに、この目的論で子どもを見ることにより、目的は何なのか、何を求めているのか、をくみ取り、よりよい関係を築くことができると考えるようです。

 

存在の勇気づけ

 子どもの問題行動の目的には、注目されたい、自分を大きく見せたい、といったものがあるようです。では、どのように対処すれば子どもの問題行動をやめさせることができるのでしょうか?これらの対処方法として、アドラー心理学では、褒めたり、叱ったりすることは良しとしていません。これらの言動は、これそのものが目的の対象となる可能性があり、子どもの劣等感を強めたり、背伸びをさせたりといったことに繋がると考えられます。アドラー心理学では、『勇気づけ』をすることが大切としています。『勇気づけ』というのは、嬉しい、ありがとう、といった言葉で、相手の存在を受容することを指しているようです。『勇気づけ』により子どもの存在を認め、「そのままの自分でもいいんだよ」ということを子どもが感じ取れれば、問題行動がなくなるということだと思います。最近では学級崩壊が問題となっていますが、もしかすると子どもたちは背伸びをしていて、必死に居場所を作ろうとしているのかも知れません。

 

共同体感覚という目的へ

 アドラー心理学の目標は、共同体感覚を育てることだと言われているようです。共同体感覚とは、分かりやすく言うと、他の人のことが考えられるようになるということです。この共同体感覚には、自己受容、他者信頼、他者貢献の3つが必要とされています。ありのままの自分を受け入れ、自分の人間関係を信頼し、そして他の人や地域のために行動する、これが最終的に共同体感覚に繋がるということだと思います。現代社会では、技術が発達する一方で、人間関係が希薄になっています。親子間での痛ましい事件や凶悪な犯罪も多く、社会全体がピリピリしているような感覚がありますが、まさに共同体感覚が欠けていると考えることができるかもしれません。