▶ 悲観のプロセス

悲嘆とは

 人は死別を代表とする衝撃的な出来事に見舞われると、ショックや悲しみ、怒りといった悲嘆感情を経て、現実の受容、前向きな思考へと心が変化していきます。この心の変化の過程を『悲嘆のプロセス』といいます。『悲嘆のプロセス』には、経過段階を示すモデルが多数あり、ブラウン&スタウデマイヤーとロバートバックマンの3段階説やアルフォンス・デーケンの12段階説などがあります。ここでは、4段階のモデルを示します。

 

第1期 ショックの段階

 第1期のショックの段階では、衝撃的な出来事が生じた直後の状態を指しており、本人は現実を受け止められず、何が起きているか理解できていない状態になっています。傍から見ると、本人は冷静さを保ち、しっかりした対応をとっているように見える場合もありますが、心の中では現実を受け入れらずにいることがよくあります。死別を例にとると、葬儀のときにしっかりと喪主を務め、冷静に対処しているように見えることもありますが、本人は現実が受け止められないため、涙すら出てこないケースもあるようです。このショック段階のことは、人によっては後でどのようにその時を乗り越えたか思い出すことができないこともあるようです。

 

第2期 怒りの段階

 ショックの段階を乗り越えると、自分や社会、そして大切な人を追い込んだ相手に対して怒りを覚えることがあります。「あのとき自分が気付いてあげていたら…」、「なんで会社は何もしてくれなかったのか!」など原因と思われる相手の行動などを責める感情が強く湧きあがってきます。このような感情はエネルギーが爆発した状態であるため、この感情を抑えることは健全ではありません。そのため、受け止める側はこういった感情を否定せずに、しっかり感情を受け止めてあげることが大切だと思います。

 

第3期 抑うつの段階

 第2期では、エネルギーが爆発する怒りの段階でしたが、その反対に悲しみによって、やる気が全く起きない抑うつの段階も存在します。「何をするにもおっくう」とか、「食べる気がしない」など、このような抑うつの段階はある一定の期間を経過すると次の段階に移ると考えられます。しかし、出来事があまりにも衝撃的な場合は、悲しみが自責の念が強すぎて抑うつ状態が改善されないこともあります。慢性的な抑うつ傾向がみられるようであれば、クリニック等の活用も考える必要があります。

 

第4期 立ち直りの段階

 衝撃的なことが起こると、上述した第1~3期の段階を経ながら、次第に前向きな心を取り戻していきます。人によっては、怒りが全く出なかったり、怒りと悲しみが同時に押し寄せてきたりなど、必ずしも示した段階を順番に経験すると限りませんが、立ち直りの段階になると、現実を受け入れた上で、今後の人生を前向きに生きていくための決心ができるようになります。