▶ 栄養療法

栄養療法とは

 栄養療法の正式名称はオーソモレキュラー療法(日本語では分子整合栄養療法)といいます。日本でこの療法を行っているところはまだわずかで、知名度もまだ低いようです。この療法の特徴は、分かりやすく言うと、食生活を改善することで、心の不調を改善するというものです。体の基本は食生活ですが、心も体と同じように考えてみようということですね。

 

脳と心の仕組み

 人の心や感情は脳によって作られており、脳内では神経細胞が神経伝達物質を使って情報のやり取りをしています。その神経細胞には興奮系、抑制系、調整系の3つがあり、これらの神経細胞から固有の神経伝達物質が分泌されることで、心や感情が作られています。分泌される神経伝達物質のバランスが取れているときは、精神的に安定した状態となりますが、例えばバランスが崩れ興奮系の神経伝達物質が多く分泌されると、心はイライラしたり、攻撃的になったりする訳です。代表的な神経伝達物質にはノルアドレナリン(興奮系)、GABA(抑制系)、セロトニン(調整系)があります。これらの神経伝達物質をバランスよく脳が作ってくれれば、心は健康的ということになりますが、栄養不足に陥ると神経伝達物質が作れないわけですから、当然心が荒れてきます。栄養療法では、神経伝達物質を作るのに必要とされる栄養素をきちんと摂取することで、脳や心を健康な状態に保とうと考えます。

 

心の健康と栄養素

 脳が神経伝達物質を作るのに必要な栄養素とは何でしょうか。それは五大栄養素と呼ばれるもので、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルからなります。ではそれぞれの役割を見てみましょう。まず、糖質は伝達物質を作るためのエネルギーになり、脂質は神経細胞を作るのに必要とされます。そして、たんぱく質はすべての神経伝達物質の原材料となっており、これを体内の酵素が分解し、ビタミンやミネラルを合成することで神経伝達物質が出来上がります。神経伝達物質の種類によって、必要となるビタミンやミネラルは異なっており、以下のようになります。

 

興奮系:葉酸、鉄、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンC、銅

抑制系:ナイアシン、ビタミンB6

調整系:葉酸、鉄、ナイアシン、ビタミンB6

 

 必要な栄養素を示しましたが、これと併せて重要なのが吸収のされ方です。単純に五大栄養素を取ればいいという訳ではなく、食べたものがどのように吸収されて、私たちの体内に運ばれていくかを意識した食べ方が重要となってきます。

 

心と栄養欠損

 心の健康には栄養が必要であることはこれまで述べてきましたが、栄養が足りなくなると神経伝達物質が作れなくなるため、その状況に応じた症状が出てくることになります。欠乏する栄養素によって症状は異なるわけですが、低血糖症、鉄欠乏、亜鉛欠乏、ビタミンB群欠乏、たんぱく質欠乏といったものがあるようです。これらの欠乏症によって引き起こされる症状にはうつ病の症状と重なるところがあります。そのため、うつ病と診断された人の中には、実際には栄養欠損による症状であり、この栄養療法によって治る人もいるようです。