▶ 自死

自死の現状 

 現在の日本では年間3万人以上の人が自死で亡くなっています。最近ではニュースでも取り上げられていますが、これは先進国の中でも非常に多い人数です。この原因は仕事によるストレスや不況による影響、また自死の直前はうつ状態の人が多いと考えられており、そのほとんどが適切な治療を受けていないといったことが言われています。この状況は10年以上続いており、非常にたくさんの人が自死で亡くなっています。そして、自死者の家族や友人が一人につき5人いるとすると、身近な人を自死でなくしている人は少なくとも90人に一人はいることになります。みなさんの周りには、大切な人を自死で失って苦しんでいる人はいませんか?いないという人は、もしかすると打ち明けられていないだけかもしれません。

 

自殺と自死

 自死とは、その字が示すように、自ら死ぬことを言います。自死という言葉が生まれた背景には、その原因としてうつ病が大きく関係していると言われています。自死をする人のほとんどが、その直前にうつ状態にあると指摘されています。そして、うつ病は脳内のセロトニンという伝達物質の不足が原因とされており、病気の一種と捕らえることができます。このことから、うつという病気により命を落としたいうことで、自殺と区別するために自死という言葉が生まれたようです。また、自殺は「自分を殺す」というようにイメージがよくないため、遺族の気持ちに配慮し、自死という言葉が生まれたという話もあるようです。

 

自死のイメージ

 みなさんは自死についてどんなイメージをお持ちでしょうか?世間では、自死に対しいろいろな意見があるようですが、そのなかで、「死ぬ気になれば何でもできるじゃないか」とか、「世の中には生きたくても病気とかで生きられない人もいるのに」といった自死者を卑下するような声も聞こえてきます。自死をを肯定する気はありませんが、周りから責められるものではないと思います。私も父を自死で亡くしてから、自死と向き合うようになり、父がどのような気持ちで自死という道を選んだのか考えてきました。自死する人は、自死を考えてしまうほどの心の痛みがあり、誰にも助けてもらえない孤独感を抱え、周りが見えなくなるほど余裕がない状態に陥っているようです。誰よりも苦しみ、我慢し、頑張ったのはその人自身かもしれません。

 

自死遺族について

 自死者は年間3万人を超えており、みなさんの周りに自死遺族の方がいても不思議はありません。しかし、みなさんの中で実際に自死遺族の方を直接知っている人はほとんどいないと思います。というのも、このような事実のほとんどは隠されているからです。自死遺族は世間体や偏見を気にし、葬儀のときでも事実を話さないことが少なくありません。私自身も友達や知り合いに打ち明けることに抵抗があります。今でこそニュースで取り上げられ、自死者が多いことは周知されていますが、世間にはまだこの事実を受け入れられる環境が整っていないのが現状です。